省エネ基準最高峰の「パッシブハウス」を解説!【part2】

更新日:2020.07.10
カテゴリー:コラム

 

パッシブハウスは断熱・気密性を高めた建築で、冷暖房がほとんどいらないほどエネルギー効率が

高いことが特徴です。なんでも建物の省エネ基準としては最も厳しいといわれるパッシブハウス、

特殊な数値や基準で説明されることが多いこのパッシブハウス基準を、

建築の知識のない方にも分かりやすく解説しています。

 

 

日本のパッシブハウス

基準の厳しさもありパッシブハウスの実際例は2010年8月の時点で世界に2.5万件程度となっており、
そのほとんどが発祥となったドイツ圏や寒さの厳しい北欧などに集中しています。日本でもまだまだ実例は数えるほどしかなく、
以下で挙げるような実験的に建てられたものにとどまっている状況です。
・日本でのパッシブハウス第一人者森みわさん率いるキーアキテクツ
ドイツを中心に省エネ施設の建設プロジェクトに携わってきた森みわ氏は、帰国後キーアーキテクツを設立。
世界レベルの断熱・省エネ住宅を日本に広めるべく活動されています。森氏は一般社団法人パッシブハウス・ジャパンの代表理事でもあります。
・2009年日本で初めて鎌倉にパッシブハウスが誕生
キーアーキテクツが手掛けた2009年8月完工の鎌倉パッシブハウス(PH-Kamakura)は日本ではじめてのパッシブハウスに認定されています。
家全体の冷暖房は小型エアコン1台のみ。入居人のインタビューによると、オール電化にしたにも関わらず
電気代が従来比約3分の1まで削減できているということです。また長年喘息に悩まされていた入居人のご家族ですが、
外気の有害物質などを取り除き家の中にきれいな空気を戻す、熱交換換気システムによる空調で喘息が治るという嬉しい副次的効果もあったのだとか。
・軽井沢のパッシブハウス
同じくキーアーキテクツが2012年に手がけた軽井沢のパッシブハウスは、パッシブハウスらしからぬデザイン性の高さが特徴です。
足元まで開けた大きな窓から縁側に続く一階部分に加えて二階にも十分な広さのバルコニーを設けてあり、
軽井沢の自然を存分に楽しむことができます。省エネにもデザイン性にも妥協しない建築を本場のドイツで
身をもって学んできたという森みわ氏の技術が詰まった作品です。
・北海道でパッシブタウン建設「オホーツク・スロービレッジ」
日本の中でも特に冬の寒さが厳しい北海道では、パッシブハウスの効果がさらに体感できることでしょう。
灯油代だけで年間何十万もかかる北海道では、パッシブハウス仕様で灯油の使用料が8分の1程度まで減らせるそうです。
そんな北海道のオホーツク地域において森氏はオホーツク・スロービレッジと呼ばれる、いうなればパッシブタウンの建設を進めています。
ヴィレッジを構成する15~20棟のパッシブハウスはエネルギー効率だけにとらわれずCO2排出量を
極力抑える仕様を目指し、太陽光発電やバイオトイレなどのエコ設備も搭載の予定だということ。
・日本でパッシブハウスが普及しにくい理由は建築業界の構造にあり?
キーアーキテクツのような設計事務所の存在はまだまだ日本の建築業界で異例と言えます。
日本でパッシブハウスの普及を阻んでいる理由としては施主の立場からいうと初期費用やデザインの問題などが挙げられますが、
それよりも大きな理由としては建築業界自体がまだまだ準備ができていないことが挙げられます。
例えばパッシブハウスの研究・建設が盛んに行われている北欧スウェーデンのような国では、建築にかかわる教育の場において
主にデザイン面と技術面で明確な区別があります。職種としても建築家と言えば、外観はもちろん使用する人々と
建物のコミュニケーション(インターフェイス)をデザインするのに長けた人材を指す傾向があります。
一方で断熱性等の機能面の追求は技術的知識に特化して教育を受けた技術者が担当します。パッシブハウスの規格に適合するための
様々な物理的計算をするのも技術者の役割です。各分野に特化した専門家が手を取り合って建築を作り上げるこうした国とは違い、
日本では機能面の計画・設計等も含めて建築士が責任を負っている場合が多くなります。当然、建築士の知識や意識の高さによって
機能面が後回しになることも容易に考えられます。こうした業界の状況もあり、おうちの快適性を確保するためには施主の
検討基準の中でどれだけ機能面への意識を高く持てるかどうかがより重要かもしれません。
上述のパッシブハウスの基準等も照らし合わせながら、デザイン・機能双方で納得のいく提案を、追求することが求められます。